賢い環境保護と省・創エネルギー

 月曜日にかねてから感心の深かった小田原の鈴廣蒲鉾本社の自然エネルギーを有効活用した新社屋を、名古屋商科大学大学院教授伊藤武彦先生とアクティブにご自分の得意分野でご活躍中のご婦人2人を伴って、4人で見学をさせていただいた。

 伊藤先生は、ご専門の経営学のなかに、環境問題と日本の老舗に注目した独自の経営論を展開しておられ、海外で高い感心と評価を得ておられることから、その両方を満たしておられる鈴廣様のお取り組を、この季節、超多忙は承知で、ぜひご一緒に見学させていただいてはいかがかとお誘いした次第である。

 鈴廣蒲鉾は創業150年の老舗で、心身ともに若々しく斬新で行動的な社長のリーダーシップは、典型的な率先垂範型。いつも自らが先頭に立ってしかも理工系の思考で事実を探求し裏づけを積み重ねて周囲を説得し動かす行動する経営者であられる。

 20年前にお目にかかったとき、既に環境問題に積極的に取り組んでおられ、それは自社のためというよりも、”地元小田原の環境を守ることで最終的には自社製品の質に換えってくる”という当時の壮大なビジョン。強い信念でEV車をはじめ、森を守り、海を保護する高い高いハードルを次々と、一歩一歩確実に乗り越えて来られた結果が今回のプロジェクトの集大成である。この間の忍耐は、言うは易し行うは難しであると思われるが、やり遂げて来られた。

 幸いなことに折々にその経過や結果を拝見して来たわたくしは感慨もひとしおで、高揚感で思わずグローバルな行動派の学者と女性経営者を見学にお誘いした。

 

 新社屋の外からの第一印象は、風祭の山並みを背に自然との一体感がうれしい。また鈴廣様がこれまで積み重ねてこられた”かまぼこの里”展開との調和も無視できない 建物に近づくと、これぞ日本の職人技と唸らせるような木の繊細な仕事で正面の外壁を覆っている。社屋内部も木がふんだんに使われていて、机や壁面の書類棚も全て地元産の木を使用し地元で製作したとのこと、森の木のリサイクルである。

 天井は上からの自然光を遮らないように、ただし構造物として見せたくないものは見えない程度のほど良い等間隔を保った梁か桟のようなデザインで覆い、見事に両方を満足させている。その結果、オープンな空間を演出して、まるで伊勢神宮のような雰囲気を醸し出していた。

 本来なら無視される運命にある節の多い木、大小の節は何と床板のデザインとして逆手に取って活かされていた。今回使用した木はすべて小田原の北側の森で育ったヒノキと杉の木と伺った。地元で共に成長した木々への深い愛情を感じて感動。

 木は日本の風土に適した建材で湿度や音を吸収する効果があり、そこに近代技術の高断熱化が加えられてオフイス機能が存分に発揮できる室内環境を整えている。

 最大のチャレンジは、自然エネルギーの活用で、太陽光発電と地下水を利用した空調システムには驚かされた。小田原の水温は年間を通して16〜17℃と安定しているので、この特徴を利用して夏・冬の外気温にてらして、その温度差だけを補助すれば一定温度が保たれ、それによって化石エネルギーの消費量を極端に減らすことができる 当日は23℃に設定された床のダクトから出て来る風は、まるで春風のようなやわらかさで、それは空気を地下水で洗ってほこりや花粉、雑菌等の外気からの侵入を防ぎ、加えて冬は加湿、夏は除湿を同時に実行するシステムにしたからなのだそうです

空気を洗うテクノロジーには驚かされた。洗濯後の水はトイレや草花への散布の再利に用いられ、しっかりリサイクルを実施しておられた。

 省エネだけではなくて創エネも考慮されていて、日本の開発している最新の建築技術と施主様の明確な意識と行動力があれば、省エネルギーで終わらず創エネルギーが可能である事実を目の当たりにして、新春早々心から晴々とした明るい未来を感じさせていただいた。