驚くべき実行力

 150年続く日本の伝統食品を扱っておられる老舗の発行している季刊誌は、その企業が存在する地元の知らざる文化や人材を紹介して、これまでにもたくさんの思いがけない歴史との関連やその土地のエピソードを楽しませていただいて来た。私が仕事を始めたときから、この会社のお若い社長からはたくさんの刺激と教えをいただき、20年間ご親交をいただいてきた。

 社長、副社長のご兄弟コンビはとにかくビジネス・センスが非常に高く、一貫してグローバルな視点で老舗の未来を考え、ビジョンがクリアーで決してブレない。頑固なまでの一貫性にはいつも驚かさせる。デールの時代にニューヨーク本部のCEOが来日したときに工場見学をさせていただいた。本社から工場まで電気自動車で移動しながら「山と海に恵まれたこの美しい環境を守りたいから。環境を守ったら私どもの商品の品質に反映されてお客様にご満足がいただけます。」この言葉にCEOは最初の驚きであった。工場に到着してもっと驚かれたのは清潔で食品の匂いが全くしないこと。「どうしてここまできれいでありながら食品が製造できるのか?外から見たらまるで医療研究所のようだ」と感動していた。

 出来上がった商品をお土産に頂戴してホテルで待っていた奥様を交えてオリーブオイルでいただいたら「日本の伝統食品にオリーブオイル?? おいしい!ワインを開けましょう」になった。

 話は横道に逸れましたが、季刊誌秋号に、「エネルギーの地産地消をめざした新社屋が八月完成」が目に飛び込んだ。「ウヒャー、本当にやり遂げられた!」と驚嘆。取り組んだ内容を読んで更に驚き、何と建物内における一次エネルギーの消費量を建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、再生可能エネルギーの活用などによって削減し、年間での一次エネルギーの消費量が、正味ゼロとなるのだそうです。20年前から綿密な計画のもと段階的に敷地全体のレストラン、店舗など着々とエネルギーの削減、自然の環境を守る取り組に、今回は新たに地中熱と地下水を利用した空調システムなど省エネと創エネを実現させた新社屋。言うは易し行うは難しで驚くべき実行力です。早速、「見学させてくださーい」とメールをしたら、すぐに「Welcome」のお返事をいただきました。来年一月下旬に世界の環境問題にお詳しいMBAの教授を伴ってお伺いします。感想はその時に。