コンビニエンス・ストアー界に激震

 今日の日経ビジネスオンライン【ニュースを斬る】には対照的な二つのタイトルが並び、それぞれの企業の未来を見た思いがした。

 

 混迷な時代であるからこそ、リーダーたちのとる行動や語る言葉がそのまま企業の近未来に即反映されることを肌で感じておられる方々が、あえて採った選択であると思われるので、衝撃を受けた。しかも明暗が鮮明だった。

 タイトルの一つは 〔セブン会長、引退会見で見せたお家騒動の恥部〕、もう一つは〔ユニクロ、値上げ路線撤回で原点回帰〕。特に4月7日に開かれたセブン&アイ・ホールディングスの2016年2月期決算会見は、突如、鈴木会長兼CEO(最高経営責任者)の引退会見へ変わった経緯と、その場に同席した社長と顧問たち経営幹部4人の鈴木CEOを支持する証言などを読んで、ここまでは鈴木CEOの強いカリスマ性によって企業が拡大発展し、業績を堅持。それを支え推進して来た4人の経営幹部の平均年齢は今や78歳。この組織のリーダーたちの年齢が非常に高い感想を持った。

 今回の騒動はセブン&アイ・グループの中で業績の良いセブン-イレブン・ジャパンの社長(58歳)人事で、現社長は過去7年間鈴木CEOの望むビジネスの提案がなされて来ず、CEOが現場でそれを補っていたが、そろそろ仕事のできる人に社長を変えたい。本人にその意向を伝えたところ、予想外に立腹して半旗をかざし、また創業者の伊藤名誉会長からも今回初めて鈴木CEOへの同意が得られなかったことなどが記されていたが、取締役会で過半数の同意が得られなかった決定的な事実が、責任を取って全職から退く決意に繋がったと思われる。

 

 鈴木CEOはアメリカのセブン-イレブンと1970年代にライセンス契約を結んで日本に導入。アメリカのビジネスの骨格に日本的な地域のニーズに密着させた取り組を血肉として加えたことで大成功し、本家アメリカを越える成果で90年代には経営権を取得している。

 コンビニエンス・ストアーのフランチャイズ・ビジネスモデルは、いまや日本中どこに行っても神社の数よりコンビニの店舗数が多いと言われるまでに拡大した。

 時代の変化を先読みし「無」から「有」を生み出して、国内のみならず近隣のアジアの国々にまでコンビニエンス・ストアーを広げた貢献度の高さは図り知れない。

 

 今後の展開は、内部事情は一切知らないので、今日の日経の記事から推し量って、取締役会の意向は経営陣の若返りを期待していると思われる。まだ外に名前は出ていないが実は期待の星が既に存在しているのかもしれない。もしその人物が40代だったら凄い!!そうではなくて、騒動の元になった社長の逆転劇が働いていたら、最悪のケースで、ライバル企業を喜ばせるだけだ。なぜならCEOが社長交代を望んだ理由とそれに対する現社長の反論が「マンションのローンが残っている」では情けない。公私混同も甚だしい甘えの極みで、これを読んで「この反論内容では交代も仕方がない」と思ったほどだ。ユニクロの〔値上げ路線撤回で原点回帰〕といった決断は、命がけで取り組み、恥をかくことを恐れない、リーダーの本気度が感じられる。

 

 それにしても後に続く人材を育んでこなかった代償はあまりにも大きい。組織が巨大化した時点で、急ぎ客観的な外部の力を活用して後継者の育成が必要だった。セブン-イレブン・ジャパンは今や株主とフランチャイズのオーナーたちが主人の会社に成長したのだから。