驚き

 今朝、新聞を取りに勝手口から朝の心地よい冷気に秋の深まりを感じながら、階段を上がって二段目か三段目で、足が釘づけになった。

色鮮やかな蝶が目の前に止まっている。

「まさか、こんなところに、アサギマダラ? そんなはずはない。」そーっと近づいても逃げない。息を殺してちかづいて捕まえた。少し小ぶりの色鮮やかなアサギマダラだ。羽根を捕まえても全く動かない。人造の蝶かと目を凝らして見るが、本物だ。とても不思議なことに階段にとまっていた時も凛として姿が崩れない。

 2年前の今頃、北九州で映画を撮っていたときに、山間部での歴史ある神社でのハイライトのシーンで、まるでその場を祝福するかのように飛んで来た大きなアサギマダラを見たのが初めての本物との出会いであった。地元の方達が「こんなに美しいアサギマダラは地元でも最近はなかなか見られません。すごいですね!きっと何か良いことがありますよ!」と歓声を上げていた。

 この蝶は、2000キロの旅が可能だとは聞いていたが、あの辺りのお山から飛んで来てくれたとしたら、1600キロはあるはずだから・・・本当に信じられないほどの遠距離を飛んで来てくれたことになる。それを思うと胸が熱くなる。いまだ信じ難い。

 長旅の疲れて動けないのかもしれないと思い、すぐに素焼きの杯にお酒を注いでソットその中に蝶を近づけた。手を離しても姿は崩れず美しい姿を保っている。

少し目を離した隙に、お酒は完全に無くなっていた。これにも驚いた。

  奇跡のような出来事を経験したことはこれまで皆無で、戸惑いが大きい・・・

 

 夕方の遅い時間に、気がついたら蝶は素焼きの杯の中で横になっていた。

今日はこのまま神棚の側にそーっとしておいて、明日庭に埋めてあげようと思う。