楽しい三つの発見

 正午過ぎ、九段下のビルの外に出ると秋晴れの好天気。雲一つない青空のあまりの美しさに まっすぐオフイスに戻るのが惜しくて、午後は予定がないことを幸いに突然ではあったがこの近辺を散策することにした。

 最初に目に留まったのは”昭和館” 昭和10年から30年頃までの国民生活を伝える国立の施設で、平成11年に開設と知った。こじんまりとした館内に当時の暮らしを偲ばせる様々な生活用品や図書、映像などが残されていて興味深かったが、国の施設にしては展示物の少なさに意外な感じもした。もっと国民を巻き込んで昭和館の存在をアピールしたら、まだまだ残されているであろうこの時代の品を集められる気がした。

 

 続いて向かったのが靖国神社。明治2年に建てられた本来の目的やこの神社の存続意義が一般的には曖昧なまま、特に近年はいろいろな意味で政治利用されていることが残念でならない。国民一人一人が過去のありのままの自国の歴史事実を知ることの大切さをあらためて考えさせられた。社内は深い緑が清々しく銀杏の葉が色づく頃に近代日本の幕開けを感じさせてもらえる貴重な場にまた来たいと思った。

 

 そこから北の丸公園へ、江戸時代に建てられた田安門を入ると最初に武道館が目に入った。武道館にはこれまで数えきれないほど通ったけれど、昼間しかも徒歩で来たのは今日が初めてで、立地と周辺の様子を知ることができて、ここでも感慨深かった。強い日差しのした、園内を歩いていると千鳥ヶ淵散歩道や芝生の広場、池などがあって、手入れの行き届いた木々には名札が表示されている。もう都内では見ることはないと思っていた野生の秋の草花との出会いも嬉しかった。一番の驚きは赤とんぼの群生が歓迎してくれたこと。嬉しくて人差し指をそーっとたてると指先に赤とんぼが止まった。お堀の内側江戸城敷地内の北隅のさらに隅にいる実感を楽しんだ。

 

 3時間弱の予定外の行動で、思いがけずに何と江戸、明治、昭和、平成と150年ほどの時空を彷徨いながら現場を散策した楽しい時間。午前中の訪問先が午後の冒険を導いてくれた気がして深く感謝した。