輝く女性たち

 フランス人の友人が、突然映画に出演することになったと聞いたときにはとても驚いた。ちょうど私も初めてのドキュメンタリー映画の撮影を開始した頃だったので、映画製作に関する共通の話題で盛り上がった。現在、友人はニースに帰っているので今日は一人で劇場に鑑賞に行き大感動した。『ゆずり葉の頃』八千草薫さんが主演、監督はこの作品が一作目という中みね子さん。故岡本喜八監督の奥様で脚本家、プロデューサーとしてご主人様を支えて来られた方と伺いました。

 映画は軽井沢を舞台にした、静かで緩やかな風景やストーリーの展開が心地よく、老いてなお凛と生きる一人のご婦人の幼い日の思い出と向き合う数日間の心の機微と行動力、静かで強い意志力とエネルギー。アメリカ映画『八月の鯨』とどこか共通点がありそうで、日本女性の品格と芯の強さを、まるで少し甘みのある柔らかいオブラートで包んだような、事前の想像を遥かに越えた素晴らしい映画だった。カメラワーク、音楽、俳優陣も仲代達也さんはじめ映画界の重鎮を揃えたプロに徹したお仕事ぶりがいぶし銀の輝きを放ち、素人の友人には素顔の彼女を上手く活かして見事としか言いようがない。中監督はこの脚本の執筆に何と5年の歳月を費やしたという。

 

 舞台挨拶後のバックステージに中監督を訪ねて話しをさせていただき、私も初めての映画制作に苦戦していることを率直に話したところ、「自分の撮りたいように妥協しないで撮りなさい。大丈夫!」と強い口調で人生の先輩からお励ましをいただき、新しい希望と勇気が湧いてきて心が軽くなった。「声のトーンまで変わりましたね」と周囲から冷やかされています。良き出会いに感謝。