ビーン・クロスビーを聞きながら

 日曜日に大掃除の第一弾として、リビングルームを片づけた。

ピアノのペタルの脇に、息子が日曜大工で作ってくれたちょっと場違いな木製の素朴なDVDの収納棚がヒッソリと20年近く鎮座している。40枚ほどの選曲は私がしたはずなのだが、すっかり記憶から消えている。数十年間全く利用していないので、この際片づけようと思いながらその一枚を手に取ったら何とビーン・クロスビーではないか。クリスマス近くに「ホワイト・クリスマス」を聴くつもりだったのかと、記憶を辿りながら曲をかけると、「ビギン・ザ・ビギン」や「モナリザ」、「セプテンバーソング」など50年代60年代の古き良きアメリカを彷彿させる曲とスローで伸びやかな暖かい声、聴いていて心が温かくなって、仕事の手が止まってしまった。

 そこで気づいたのは、最近はどれほど金属的で緊張感に満ちた音と強力なアップビートに慣らされてしまっていたことかということだ。都会の生活はどこに行ってもさまざまな高音に満ち溢れていて静けさからはほど遠い。

 忙しい季節だからこそ、せめて自宅では、ゆったりとした暖かい、まるで話しかけられているようなスローテンポの曲をバックグラウンド・ミュージックに・・・この感覚は悪くない。まるで無くしたと思っていたものを取り返したような気分だ。

 今夜もビーン・クロスビーを聴きながら、ゆったりムードを演出したら久しぶりにブログを書く時間がとれた。