また、大きな図書館を一つ失った。

 パリから戻ってすぐに、友人から伴侶の死の知らせがあり、ご家族だけで静かに見送ったご挨拶文を受け取った。40年を越えるご親交をいただいてきたので、このお知らせはとても淋しかった。ハーバード・クラブ・ジャパンの代表を長く務めた加藤 祐一氏である。’70.’80年代には月に一度会合を持ち、当時の日米の話題のゲスト・スピーカーを招いて活発な活動を続けた。会の会長、副会長の夫たちはとても忙しかったので、実質的な案内状やゲスト・スピーカーの手配、当日の受付は我々妻軍団が陰でボランティアとして支えた。楽しい時間だった。

当日の楽しみは、何と言っても会長の加藤氏がセンスとユーモアに溢れた英語で、どのようにゲストを紹介するかであった。彼は不思議なほど、日本語も英語も同等に自然で嫌みがなく、美しく、私の知るかぎり最高の言葉使いの達人であった。アメリカ人も彼の表現力には舌を巻いていた。

 

 今日ご自宅でお別れの会が営まれた。母親を支える4人のご立派なお子様たちと久しぶりに再会して、何て思いやりに溢れた美しいご家族なのだろうと感動した。

頭脳明晰でやり手の経営者であった加藤氏のもう一つのお顔は、家族を愛する素晴らしい父親であったことをお子様たちの対応から感じて、悔いの無い人生を送られたであろうことを心から祝福した。

 

 それにしても、友人としては大切な相談相手を失い。またまた大きな図書館を失ってしまったような喪失感は大きい。