春風が運んでくれたメッセ−ジ

 普段は見ることのない朝のテレビ番組で偶然見た風土記「源氏物語」で、思いがけず京都の赤山禅院が紹介されて、画面に釘付けになった。

紫式部の作品に登場するということは、平安時代には既に存在していた歴史あるお寺であることの発見と驚きである。

 知人のご紹介で、赤山禅院の大阿闍梨・叡南覚照ご前様とご親交をいただき、それ以来アメリカの友人と私は、いくつものワクワクする経験を重ねさせていただいた。私たちを喜ばせることがお好きで、外出のときには、ジーンズにTシャツ、お帽子姿に変身して自ら猛スピードの運転で、いつも照れくさそうに、せっかちに、お気遣いとおもてなしを頂戴した。友人と私はその度に目を丸くし、同時に二人はそんなご前様が大好きだった。

二人の近況を楽しそうに聴いてくださり、宗教やお寺の歴史、自らの偉業や取り組などはお聞きしても深く触れることはほとんどなく、三人の間に流れる静かな時間を「えーなー、ありがたいなー」と仰って大切にしてくださった。

ある日突然、ご養子をお迎えになり、未来を彼に託すなど、自らの進退を静かに厳しくお話しくださり、「今後は一切お会いしない。」を最後に私たちはそのようにしている。

 紫式部が教えてくれた赤山禅院。大阿闍梨様とのご親交を振りかえり、あの時間に、実はたくさんの教えや考えるヒントを頂戴していたことや、さまざまなご縁に気づかされて・・・いま改めて深く感謝している。