生活空間と人びと

パリの町を歩いていて、こんなに道幅が広かったかしらと驚いた。

建物と歩道の空間がほどよい具合に保たれていて、ゆとりを感じる。古くからの建築物を大切に守っているので、落ち着いた雰囲気を維持している。セーヌ川に沿って歩くと、主要な建造物やスポットに辿り着くことが出来る。人の身になって計画された街づくりだと感心する。

近年フランスは世界で一番観光客を多く受け入れていると聞き、さもありなんと納得した。他国からの訪問者は、自国には無い訪問国の特徴を求めているのだ。パリにはそれがあった。だから訪問者はワクワクする。

翻って、昨日歩いた六本木ヒルズ周辺は、悲しいまでに変貌を遂げてしまった、数件の知人宅も、ヒルズに吞み込まれて、コンクリートで固められた町には住めないと、泣く泣く郊外に移住した。思い出のいっぱい詰まった大好きな町の一角が、ある日歴史ごとブルトーザーでかき消されていったのを見ていたので、変貌を遂げた街をなかなかゆっくり歩く気がしなかった。

ケヤキ通りの裏道には桜並木を作って、「10年経った桜は見頃だから、ぜひ観てください。」と勧められて行ってみた。桜は美しかったけれど、無表情なコンクリートの建物には相変わらず違和感を感じて好きになれない。

都市計画にはもっと時間をかけて、未来を見据えた、この国らしさを感じさせる住人が満足する内容であってほしいと強く望む。

行き過ぎた商業主義は人の心を蝕んで、未来を暗くすることを最近特に強く感じる。