淋しいニュース

コラムニスト天野祐吉さんの突然の訃報には驚いた。本質を突いた厳しいけれど暖かいコメントと経済優先の社会の風潮を戒め、文化を磨くことの大切さを説く視点が好きだった。朝日新聞を購読しているのは天野さんの週一回の「CM天気図」を読んで共感したり、私の気づかない視点を教えてもらう、それだけの理由だった。メディアに対する批判は鋭いのに、刺がない。一行の文章の向こう側に、その数十倍の裏づけと思い入れがあって、あの文章が生まれたのだろうと感じさせられることが何度かあった。「こだわりと月並みと野暮が嫌いだった」と聞くと、洒脱な人だったのだなーと思わず膝を叩きたくなる。本当に惜しい人を失った。正統派は多いけれど、深い知識や教養を、時には少年の眼で、時にはご隠居さんの心境で語れる、自由で伸びやかで遊び心を備えた思考の持ち主にはなかなかお目にかかれない。

国の成熟度は、天野さんのような文化人をどれだけ擁しているかが一つの尺度のような気がする。天野さんに続く洒脱な文化人に早くお目にかかりたい。